労働基準監督署の立ち入り調査
労働基準法等の法令違反があるかどうかを調べるために事業所への立ち入り調査をする権限が労働基準監督署の労働基準監督官には、与えられています。<臨検といいます>
これは、突然に遭遇する場合、何らかのきっかけがあり立ち入り調査(臨検)を受ける場合などがあります。
監督官が定期的に事業所を無作為に調査するもの、労働者の申告によるもの、その他司法手続きによるものなどがあるのです。
労働基準監督署労働基準監督官からの是正勧告書
この時、労働基準法違反、労働安全衛生法違反などがあると「是正勧告書」または法令違反が少ない場合は「指導票」が交付されます。
これにより指定期日までに是正をするよう、勧告されます。
指摘事項にはいくつかのポイントがあります。

<残業時間の計算と割増賃金>
A社では、タイムレコーダーの就業時間設定が15分単位で行われていました。
給与計算事務処理上、都合がよいのです。
また、社長の方針で、仕事が終わってもダラダラと仕事もしないのに在社して、その後、タイムカードを押すのだからと、15分単位での端数は切り捨てるという割増賃金計算処理をしていました。
これは、労働基準法違反となります。
たとえ、従業員の了解を得ていたとしても、納得していたとしても・・・です。
結果、労働基準法に反する処理をしていたのであれば、指導対象となるのです。
<就業規則の作成と届出義務>
B社は、正社員6人、パートタイマーの女性が8人います。
パートタイマーは、週に3日程度の交替制で、しかも、中には1日4時間程度の就労時間の従業員もいます。
事業主は就業規則を作成した方が良いとはわかってはいても、いろいろな就業体制の従業員がいるので、まとまらず、なかなか着手できずにいました。
常時10人以上の従業員がいる会社は<就業規則の作成・届出義務>があります。
たとえ、短時間勤務であっても、週に1、2日程度しか、出勤しない場合でもこの10人に含まれます。この「常時」というのは、正社員だけを指すものではないのです。
従って、この会社では就業規則を作成して、労働基準監督署に届け出る義務があります。
作成していなければ、当然、指導の対象となります。

<36協定を届け出ていない>

原則として、1日の労働時間は8時間以内、1週間の労働時間は40時間以内と労働基準法上、定められています。(一部を除く)
これを超える労働をした場合、労働基準法違反になる・・・・・のですが、「時間外・休日労働に関する協定届」(通称:36協定)を労働基準監督署に届け出ることにより、一定の時間内において時間外労働、休日労働を行わせることが可能になります。
言い換えれば、「時間外・休日労働に関する協定届」を届け出なければ、残業、早出出勤、休日労働をさせることができないのです。

<変形労働時間制についての不適切な扱い>

1ヶ月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制、フレックスタイム制など、上手に扱えば、労働時間の削減による従業員の方の安全衛生の確保、会社側にとっては経費の削減につながります。
但し、就業規則にきちんと定められているでしょうか?
変形労働時間制についての労使協定を届けていますか?
法令通りに運用されていますか?

<法定3帳簿>

労働基準監督署の調査を受けたときは、法定3帳簿といわれている「賃金台帳」「労働者名簿」「出勤簿(タイムカード)」は、ほぼ間違いなくチェックを受けます。


1.賃金台帳

特に最近は、サービス残業に対して厳しく見られるので、出勤簿(タイムカード)と照合して、きちんと残業代・割増賃金が支給されているか細かくチェックされます。
「賃金台帳」に記載すべき項目は法律で決まっています。
1. 氏名
2. 性別
3. 賃金計算の期間
4. 労働日数
5. 労働時間数
6. 時間外・休日・深夜労働時間数
7. 基本給・手当その他、賃金の種類ごとにその種類
8. 賃金の一部を控除した場合はその額


2.労働者名簿

これについても、法定の項目があります。
1. 氏名
2. 生年月日
3. 履歴
4. 性別
5. 住所
6. 従事する業務の種類
7. 雇入れの年月日
8. 解雇又は退職の年月日
9. 死亡の年月日及びその原因
全部で9項目ありますが、こちらも記載漏れについては同様に指導対象となります。
なお、これら3つの帳簿に3年間の保存が義務付けられていますので、従業員が退職したからといって、賃金台帳を捨ててしまうと、これも指摘事項となります。


3.「出勤簿(タイムカード)」

従業員の労働時間を適切に管理していますか?
賃金台帳・・・給与明細書のことではありません。
労働者名簿・・・ご存じない経営者もいるかもしれません。
知らないからと言って、免れるわけではありません。
労働基準監督署は結果だけを見るのです。

結果、法律で求められている帳簿、記載事項がなされていなければ、指導対象となるのです。

<定期健康診断を実施していない・結果報告書を提出していない>

労働安全衛生法に基づいて、年に1回の定期健康診断を実施しなければなりません。これは事業所の規模を問いません。
また、常時50人以上の労働者を使用する事業所(会社)は、遅滞なく、定期健康診断結果報告書を所轄労働基準監督署長に提出しなければならないことになっています。
日頃の業務が忙しい、従業員自らが自分は受診しなくてもいい・・・・という申し出があったとしても、事業所(会社)側としては年に1回の定期健康診断を実施する義務があるのです。
結果として、定期健康診断を行っていなければ、指導対象となります。
 

企業経営にとって、欠かすことのできない重要な要素は「カネ」ですが、その「カネ」を生むのが「ヒト」です。つまり労働者であり、その労働環境を整えることが企業発展には欠かせません。

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