個人事業・創業

個人事業と法人の違い

税金面での違い

個人事業の収益は個人所得としてみなされ、所得税が課税されます。個人事業は累進課税が適用されているため、所得が増えるに従って税率が高くなり、所得税と住民税を合わせると最高税率は50%になります。また、青色申告者は65万円、もしくは10万円の控除を受けることができます。法人の場合は、原則30%の均一課税のため、法人税・法人住民税と合わせて約40%の税率になります。
経費に関して、第1に法人の場合の役員への給与の支払いは「役員給与(報酬)」として経費になり、更に個人事業にはない「給与所得控除」を利用でき、課税所得の圧縮が可能となります。第2に退職金について、個人事業の場合には、事業主はもちろん、事業専従者も退職金の支給は必要経費として認められていません。法人の場合には、役員及び従業員に対しては適正な退職金額であれば経費として認められます。
第3に欠損金の繰越期間について、個人事業の青色申告における繰越期間は3年間ですが、法人は7年間繰越し可能とされています。
最後に交際費について、個人においては事業に必要なものであればなんら制限がありませんが、法人は資本が一億円までの場合は、支出した交際費が定額控除限度額(800万円×事業年度の月数/12)を超える場合の超える部分の金額が損金不算入となります。

社会保険での違い

個人事業の場合、社会保険への加入は任意となっているため、事業主が国民健康保険と国民年金に加入するケースがほとんどです。しかし、一定の事業を行う事業所で、常時5人以上の従業員を使用する事業所は強制的に加入しなければいけません。法人の場合は、人数を問わず強制的に加入となり、代表者も配偶者も健康保険と厚生年金に加入することになります。

社会的信用度

個人事業は株式会社のように、そこに携わる人々の権利義務関係が明確になっていません。
しかし、法人は個人とは切り離された法人格が認められるため、事業に関わるあらゆる権利義務の主体となることが法人には可能です。法人は、会社法や商法等で会社に出資した株主や債権者等の保護が規定されていたり、役員の責任等が規定されていたりと詳細な規定が法律により定められておりますが、個人事業は、民法や商法等で規定されてはいるものの、法人に比べて規定が少ないと言えます。
事業に関わるあらゆる権利義務の主体となることが可能な法人は、個人事業とは異なり、法人名義で銀行口座を開設したり、法人として銀行から融資を受けることが可能です。
法人を設立すると、会社の登記事項を確認することが可能となります。登記簿謄本には、その会社の商号・本店所在地・設立年月日・事業目的・資本金・役員に関する事項等が記載されております。銀行融資や新規取引先に会社の登記簿謄本の提出を求められることが多々ありますが、これらも法人の社会的信用を裏付けるものとして捉えることが出来ます。

資金調達について

公的金融機関は個人事業にも融資をしますが、銀行は法人でないと中々融資をしてくれません。そのため個人事業である限りは大きな融資を受けることができず、事業を大きく展開することは難しい場合があります。
しかし、法人の場合には「開業準備資金融資」など、多くの融資制度が用意されており、保証人も会社の社長本人で済むケースが多く、第三者に迷惑をかけません。つまり、融資の申込人が会社で、会社の保証人として社長個人がなるケースが多く、個人事業のように第三者を保証人に設定し、最悪の事態として、第三者に借金を肩代わりして頂くというようなこともないので、会社の方が個人事業よりも融資を受け易く、他人に保証人という負担をかけずに済みます。
また、法人の場合は、融資の他に出資など資金調達方法が多様であるため、個人に比べて資金調達がしやすいのです。

従業員の採用

個人事業の場合、労働条件が明確にされていない場合が多いのに対し、法人の場合は、従業員が10人を超える場合には就業規則が定められているため、有能な人材を確保しやすいと言えます。

事業の継続性において

法人の場合は、事業用の財産等の評価額が株式での評価となり、その財産は株式の評価の中に集約されるため、生前に株式を移転することで、 後継者への経営承継を計画的に行うことができます。

個人事業・創業

所得税

個人事業の場合、事業所得に対して所得税がかかります。事業所得とは
「売上高-売上原価(商品等の仕入高等)-必要経費(売上原価以外の)」
で計算されます。
個人事業の場合に特に注意しておくことは次のとおりです。

1.売上高は商品を納入した時点で集計することになります。すなわち、商品を売った代金を請求した時点や、現金、預金(振込)、小切手、手形などを受け取った時点ではないことです。
建築の場合は工事が完了し物件を引き渡した時点、デザインやソフトプログラムなどは制作品が完成し検収後引取りをしてもらった時点です。業種業態が違うといえども、原則は「引き渡し」時点です。
したがって、契約時点で手付金が入金された場合などは、前受金となり、売上とはなりません。
個人事業の特徴として、自家消費があります。商品などを家事のために消費したり、親類や知人に無償または低額で譲ったような場合には、販売価額の7割または仕入値段で売上に計上しておく必要があります。

2.売上原価は商品の仕入高から年度当初に持っていた在庫を加え、年度末に残っている在庫を引いて計算します。これは簿記の手法として、売れた商品の原価を計算するためです。

3.必要経費(売上原価以外)

個人事業において売上原価以外の必要経費としては、次のものがあります。
租税公課、荷造運賃、水道光熱費、旅費交通費、通信費、広告宣伝費、接待交際費、損害保険料、修繕費、消耗品費、福利厚生費、給料賃金、利子割引料、支払手数料、外注加工費、研修費用、減価償却費、事業用固定資産の損失、貸倒金、民事刑事事件の費用、青色事業専従者給与、貸倒引当金など。

個人事業の必要経費での注意点は次の点があげられます。

a.事業用と個人生活用とを混同しないことです。例えば、店舗併用住宅における固定資産税、水道光熱費、損害保険料、減価償却費、損害保険料などや、自動車・携帯電話なども事業用と生活用があります。それぞれ使用割合に応じて事業用のみを必要経費とする必要があります。

b.接待交際費では、「専ら事業の遂行上必要と認められる場合に限り」必要経費として認められます。したがって、私的な飲食やゴルフプレー代で家事費と認められるものや社交団体に対する入会金や会費は必要経費となりませんので注意が必要です。

c.家族に支払う給与・家賃

生計を一にする配偶者や親族に対して支払う給与、地代家賃、利子などは必要経費になりません。給与を支払う場合は次の青色事業専従者給与として要件を満たす必要があります。

d.青色事業専従者給与が認められる場合

  • ・事業主が青色申告者であること
  • ・その親族が専ら青色申告者の営み事業に従事していること
  • ・労務の対価が相当であること
  • ・務署への届け出と記載された方法や金額での支給(ある時払いではなく毎月支給するようにしましょう)

青色申告者には次の特別控除があり、事業所得から以下の金額(または所得額のうちいずれか少ない金額)が控除されます。

a.65万円 ・・・ 帳簿書類の備え付けと、複式簿記による会計帳簿及び決算書の作成が必要。
なお、不動産所得については事業規模(5棟10室基準)に達している必要があります。
b.10万円 ・・・ 簡易方式または現金主義により取引記録を記帳。

また、所得税は累進税率となっており、税率は以下のとおりです。

課税される所得額 税率(%) 控除額
195万円以下 5 0円
195万円超 330万円以下 10 97,500円
330万円超 695万円以下 20 427,500円
695万円超 900万円以下 23 636,000円
900万円超 1800万円以下 33 1,536,000円
1800万円超 40 2,796,000円

※ 事業所得などの合計所得から控除金額(医療費、社会保険料、生命保険料、配偶者・扶養者控除、基礎控除など)を差し引いた課税所得金額

消費税

基準年度の年間課税売上が1,000万円を超えれば、課税事業者として消費税が課せられます。
1,000万円以下であれば免税事業者として、課税の対象(課税売上)となる取引に消費税は課せられませんし、課税仕入れに係る消費税額も控除できません。
消費税については個人も法人も基本的に同じ取扱です。

住民税

税率10% (県民税4% + 市民税6%)

事業税

事業所得に対して標準税率5%(一部4%または3%)
青色事業専従者給与あり。事業主控除年間290万円。

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